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生産システムの異常診断入門System Check

第7回 生産システムの異常・故障対策

システムを安全で効率よく稼動するためのシステムの
設計と運用の基本方策の一つは、システムを故障
(failure)に
陥らせないことである。システムは前回
までに定義したように、また図1.6に示すように、
多数の構成要素がシステムの目的を遂行するように
有機的に組み合わされたものである。要素はいくつ
かの部品が要素の持つべき機能を実現するように
組み合わされ、部品は幾種類かの材料に適当な
形状を持たせ、それを組み合わせて作られている。
材料は幾種類かの分子で作ら、分子は原子から
作られている。
システムの故障の最も究極的原因は最も微視的
レベルにある。すなわち、システムに加えられてる
ストレスは原子、分子レベルの変化を誘発し、これが
材料における疲労、破断、腐食を起こす。
このような材料の劣化は部品の劣化故障の原因と
なり、続いて要素の特性劣化、故障が起こり、最後に
システムの劣化、故障を引き起こす。
したがって故障を科学する立場からは、いろいろな
ストレスと原子、分子レベルの変化の関係を明らか
にし、その結果から故障対策を考えるべきである。
しかし、われわれが身近で使う簡単なシステムですら、
そのストレスの種類、材料の使われ方は千差万別で
あるばかりでなく、そのシステムは膨大な数、種類の
材料、部品(それらの部品が受けるストレスもいろいろ)
から作られ、上の科学的立場からの故障対策だけでは
実際的でなく、よりマクロな現象論的故障対策も必要
である。
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故障解析と耐故障システム設計

(1)材料,部品劣化の物理・化学的メカニズム
材料,部品に与えられるストレスとそれらの劣化のメカニズムを反応論モデルを
利用して表現し解析する。反応論モデルに未知係数が含まれる場合、比較的
短時間の実験でこれらの未知係数を推定する。この推定した係数を反応論
モデルに代入し、あるストレスのもとでの材料、部品の劣化の進行速度、寿命を
推定する。以上のようにして求まった劣化速度、寿命のデータを部品要素の
設計データ、PM(PreventiveMaintenance)のための基礎資料として利用する。

(2)部品,要素の故障統計
新しい部品,要素をあるストレス下で使用していくと,ある時刻で故障する。
同一のタイプの部品、要素を同じストレスで使用しても、故障が起こる時刻は
ランダムで、この使用開始から故障が起こるまでの時間は統計的に処理しなけれ
ばならない。この統計処理によって、ある部品、要素の寿命、故障率などが推定
できる。さらに、これらの推定結果と反応論モデルに含まれる係数の関係より、
反応論モデルの未知係数の推定にも利用できる。これらの推定寿命、推定
故障率、さらに推定反応論モデルはシステム設計、PMのための資料として
利用される。

(3)保全を伴うシステムの信頼性解析
システムには故障がつきものである。故障が起きたり、あるいはある部品が
明らかに寿命期に入ったことがわかった場合、その部品を修理したり、交換し
たりしなければならない。システムの運用上、この故障したりあるいは寿命期
にある部品の修理、交換が規定の時間内に完了するか否かは部品の故障と
同様に重要な事項である。このように、故障とともに、保全に要する時間の
システムの信頼性を解析する。このデータによりシステム保全の人的、設備的
体制が設計できる。

(4)システムの構造的故障解析
システムのある要素が故障すると、その部分(あるいは全体)機能が失われ
れる。このような機能喪失の原因となる要素あるいはその集合を求める。
システムの機能喪失の第一次原因、第二次原因……と原因を掘り下げ(それ
とともに原因の数も多くなる)、この関係を論理図、論理式で表し原因の因果
関係を整理する。システムの異状、故障診断に使用される。
以上、(1)~(4)の故障解析の結果は、耐故障システムの設計データとして
使用される。これにより故障に強く信頼性の高いシステムが設計され、これ
は一つの重要な故障対策となる。しかしシステムに加えられるストレスの種類、
程度はすべてがあらかじめわかっているわけではない。したがって、たとえ
上述のような解析データを利用し耐故障システムを作ったとしても(作らない
場合はもちろんのこと)、システムはやはり予期しない故障に陥ることがある。
そのためオンラインで、あるいは定期的にシステムの状態を監視しシステムの
異状を検知・診断し適切な保全を施さなければならない。そのための対策と
して次のようなものがある。

システム異状の検知・診断

(1)システム異状の検知のためのセンシング
システムの異状な状態を示す物理・化学量を電圧のような処理しやすい(例えば
増幅したり、フィルタリングをすることが容易な)物理量あるいは数値に
変換する。
このような電圧、数値に適当な処理を施してシステムが異状状態に
あるか否かの
判定に使用される。

(2)システム変量の変化の検出による異状検知
システムの要素(あるいは部品)の劣化、故障に対しシステムから測定される変量
の感度が小さい場合あるいは測定値がノイズで乱されている場合、これ
らの故障
による測定量に対する変化は直接検知しにくい。例えば、例1.1で
述べたように
フィードバック制御システムは制御による故障の隠蔽効果でこの
ようなことが起こる。
このような場合、測定された時系列データそのものを観
察するより、このデータの
スペクトルや、時系列モデル(測定時系列データの
伝達関数)の係数を観察する
方が、故障による変化が検出しやすいことが多
い。このような方法により要素(部品)
の劣化、故障による変化を強調する。

(3)システムの全状態量の推定と故障により変化すると考えられるシステム
係数の推定による異状検知と診断
異状検知の決め手となる状態量でも、計測コストが高すぎる等の理由で、その量を
直接測定しない(できない)場合がある。このような場合、システムの状態観測器
(stateobserver)が有用である。異状検知への状態観測器の応用に当たっては、
システム中に故障による未知係数が含まれるため、特殊な観測器を設計しなければ
ならない。故障の原因およびその程度は対応する要素(部品)の係数が正常時の値
からどれだけ変化したかを推定することでわかる〔図1.1(b)参照〕。
したがって、故障の可能性のある要素(部品)の特性を表す係数を推定することで、
その要素の劣化の程度が推定でき、システムの早期異状診断ができる。係数の推定
には拡張カルマンフィルタ(extendedKalmanmter)等のパラメータ推定法が利用
される。

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