図1.3に示したように,システム,要素あるいは部品の故障率はバスタブ曲線特性を持つ。
同図の初期故障期に多発する故障を直し(debug)た後は偶発故障しか起こらない安定期
に入り、それが過ぎると摩耗故障期に入る。安定期から摩耗故障期にかけて、故障は時間
とともに進行、増加し故障率も高くなってくる。このような時期からシステムの異状状態は、
(1)早期異状、(2)破局故障の起こる直前の状態、(3)末期故障の状態に移行していく。
以下このような異状の状態を定義しておく。
異状の原因がシステム(要素)を構成する部品の劣化による故障であり、故障の程度は
軽くシステムは稼動できるが、どことなく本調子でない状態にある場合を早期異状という。
原因となる部品の劣化の速度が定期保守期間に対して、長い場合と短い場合がある。
部品劣化による影響が通常のシステム運用のための計測器で検知できる場合、この異状
は早期の段階で容易に検知できる。システム運用のための計測器で測られる変量から
直接判断できず、潜在的に異状、故障が進行する場合はやっかいである。
この場合、特別なセンサを利用するか、高度なデータ処理法を駆使して、システムの
中のすべての基本状態量、要素や部品の特性や形状を表す係数を推定しなければ
ならない。
異状の状態が急速に進行しないような場合でも、潜在的にシステム運用に悪影響を
与えたり、あるいは長期的にこの悪影響を積分すると、運用コストが結局高かったり
することがある。したがって異状およびその原因は早期に検出し、必要であれば適当
な処置を施してやることが最も望ましいことである。
【例1.1】 潜在的に異状,故障が進行する例
| ある程度高度な生産システムの精度,製品の品質を上げるためにフィードバック 制御が施されている。例えば適応制御のように制御の方式が高度であればある ほど外乱、システムパラメータ変動等によるシステムの乱れを調整してしまう。 このようなシステムの乱れが正常状態で起こり得る原因だけでなく、システムを 構成する要素の故障もある。適応制御に限らずフィードバック制御を施すと、 このような要素の故障によるシステムの乱れも調整され、故障が潜在化する。 このような制御による故障の潜在化を制御による故障の隠蔽(conceal)効果と 呼ぶことができる。このように隠蔽された故障はあるストレスのもとで成長し、 ある段階でシステムが動作しなくなるような故障を引き起こす。 |
システムの要素あるいはそれを構成する部品には,図1.4の下部(異状の進行)
に示すようにある程度劣化が進行すると、急に劣化速度を速めるものがある。

【例1.2】 急激に進行する劣化の例
| 応力を支える機器(圧力容器),部品があり,この機器部品に小さな亀裂が生じる と,亀裂部に応力が集中し,悪循環的にこの亀裂を大きくし機器部品を急速に 破壊に導いてしまう。 1本の鉄棒の長さ方向に、これを縮める方向の力を加える。はじめ鉄棒はこの力 に耐えるが、鉄棒が横方向に少しでも曲がると、鉄棒は急速に曲がりはじめる (座屈)現象もこの一例である。また針金を何度か局部的に曲げたりもどしたり していると、簡単に折れてしまう。これは針金(金属)が疲労の限界に急速に 達し、これを超えたからである。 |
またあるシステムでは,システムの要素の特性が一定の程度まで劣化すると
システムの機能が停止してしまうことがある。
【例1.3】 急激に進行する劣化の例
| ある程度高度な生産システムの精度,製品の品質を上げるためにフィードバック 制御が施されている.例えば適応制御のように制御の方式が高度であればある ほど外乱、システムパラメータ変動等によるシステムの乱れを調整してしまう。 このようなシステムの乱れが正常状態で起こり得る原因だけでなく、システムを 構成する要素の故障もある。適応制御に限らずフィードバック制御を施すと、 このような要素の故障によるシステムの乱れも調整され、故障が潜在化する。 このような制御による故障の潜在化を制御による故障の隠蔽(conceal)効果と 呼ぶことができる。このように隠蔽された故障はあるストレスのもとで成長し、 ある段階でシステムが動作しなくなるような故障を引き起こす。 |
早期劣化故障による早期状態にある要素の異状はシステムの動作ストレス、
環境ストレスにより徐々に進行し、そのまま放置しておくと、ある段階で破局
故障を引き起こす。この状態にあるシステムを異状の進行の立場からいうと、
末期故障(fatal failure)の状態にあるという.この要素の故障に対してバッ
クアップがあらかじめ用意されていると、バックアップによりシステムの運用
は継続され得る。しかし原子炉のような特別なシステムを除き、考えられる
故障すべてにバックアップを取り付けると、システムはバックアップのために
設備的にもコスト的にも装備が重すぎることから、重要な要素だけにバック
アップを付けるのが普通である。また、あらかじめ考えつかなかった重要な
故障も起こるかもしれない。このような場合、ある要素の破局故障が他の
要素に衝撃を与えたり、過負荷の原因となり、要素の故障が連鎖していき
事故、災害を招くことがある。このような現象を故障の波及と呼び、システム
故障の末期症状の一例である。
図1.4は動作ストレス,環境ストレスに起因し,故障メカニズムを通して
現れる故障モードと、故障の進行の様子をまとめて示してある。