システム故障の構造と解析の手法、すなわち故障の原因の究明、故障の波及
効果等の解析の代表的手法としてFMEA(Failure Mode and Effect Analysis)と
FTA(Fault Tree Analysis)がある。FMEAはシステムの要素あるいはサブシステム
が故障した場合、その悪影響がシステムの機能にどのように及ぼされるか、また
故障モードによってそれがどのように現れるかを系統的に評価する方法である。
FMEAは数学的モデルを利用し数式的に解析を進めるというより、むしろ表を活用
した比較的定性的な解析法である。
FTAは規定されるシステムの故障状態に対し考えられるすべての原因を追求して
いく方法であり、論理図を利用しながらその原因の構造を積み上げていく方法で
ある。いったん論理図が作成されると、これは論理式に書き直され、Boole代数的
処理で故障原因の構造が整理されシステムの故障要素とシステム故障の関係が
明らかになる。論理式でシステム故障のモデルが記述され、このモデルを数学的に
処理することで解析を進めるという意味でFTAは定量的である。FMEAに関しては
多くの文献があり、比較的アプローチも楽であるので、今回はFMEAは省略し
FTAについて詳しく述べることとする。
システムは図1.6に示したように要素一部品一材料一分子一原子と、構成する
単位を小さく見ていける。したがって図5.1に示すようにシステムの故障の原因は
それを構成している幾つかの要素の同時故障あるいは、ある要素単独の故障と
要素レベルに落とすことができる。


引き続きこれらの要素の故障の原因はそれを構成する部品の故障、というように
システムの故障の原因をより下位のレベルにある小単位の部分に狭めていくこと
ができる。このようにシステムの故障の原因を掘り下げていくと、最後にこのシステム
の故障を誘発する部分(部品)に到達できるとともに、その故障を引き起こす可能性
のあるすべての基本的原因を洗い出すこともできるはずである。このようなシステム
の故障とその基本原因との因果関係は論理式で与えることができ、これがあらかじめ
わかっていると、この情報はシステムに本当の故障が発生した場合の原因究明
(システムの故障診断)のスピードアップを図ることができるだけでなく、耐故障システム
の設計にも役立てることができる。このようにシステム故障とその基本原因の関係を
明らかにし、この情報をシステムの故障診断に活用することをFTAと呼ぶ。
図5.1に示すようにシステム故障を樹の幹、要素故障を幹から出た枝、部品などの
故障を枝から出た小枝に例えれば、これらの故障の因果関係は樹(tree)の形になる。
このことより、このような故障の因果関係を示した図のことをFT(Fault Tree)と呼ぶ。
以下、FT作成に使用される基本的な記号、FTと論理式の関係、FTの簡単化、FTを
利用して各部品と故障確率からシステムの故障確率を求める方法等について述べる。