これまでは部品が熱、その他のストレスによって劣化する現象を表す物理・化学的
モデルについて考えた.ここでは現場で得られた部品の故障時間(ランダムデータ)
から、その部品の故障率、平均寿命などを推定する方法を考える。
データは同一部品について同一ストレスのもとで採取され表3.1に示すように整理
されているものとする。

残存数(survival)n(t):時刻t=0で正常な部品数をn0とする。時間の推移とともに
部品が故障し、時刻tおいて正常な状態で残った部品数。
残存率(survivalrate)R(t):時刻t=0における正常部品数に対する時刻tまで
正常な状態で残った部品の個数の比率で、次のように表される。

これは時刻tにおける部品の信頼度(reliability)関数あるいは残存確率(probability
of survival)とも呼ばれる。表3.1のデータから次のように推定される。

信頼度関数R(t)は次の性質を持つ。
(1)R(t)は時間tの非増加関数(故障した部品は正常にもどらない)
(2)R(0)=1(t=0で故障部品なし)
(3)R(∞)=0(いつかすべての部品は故障する)
不信頼度(unreliability)F(t):時刻t=0における正常部品数に対する時刻t
までに故障した部品の個数の比率で、次式で与えられる。
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これは故障確率(probability of failure)とも呼ばれる。表3.1のデータから
次のように推定される。

式(3.3)よりF(t)とR(t)の間には次の関係がある。
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故障時間の密度関数(density function of failure time)f(t):単位時間
当たり部品が故障していく割合で、次式で与えられる。

ここで,
はデータ採取間隔⊿t=(t+⊿t)-tを極限まで小さくしたという
ことである。データが表3.1のように与えられた場合、次式

により故障時間の密度が推定できる。式(3.6)より、故障時間の密度関数f(t)
と不信頼度関数F(t)の間には次のような関係がある。

さらに式(3.3)を用いると、f(t)とF(t)、R(t)の間に次の関係が成立する。
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表3.1のデータを用いると、式(3.9)の関係式は次のように与えられる。

故障率(failure rate)λ(t):時刻tまで残存した正常な部品数に対して引き続く
単位時間に故障する部品数の割合を表す量で瞬時故障率(hazard rate)とも
呼ばれ、次のように定義される。

表3.1のデータから故障率は次のように推定される。

式(3.11)はR(0)=1であったことより、次の微分方程式で表され

この解は次式のようになり、故障率λ(t)と信頼度関数R(t)の関係を与える。

式(2.11)の右辺の項を

と表すと,式(3.11)は次のように書き換えることができる。

いま式(2.2)において定義された部品の劣化量xを
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とすると、式(3.16)は式(2.2)と同じ形式の方程式であることがわかる。信頼度
はR(0)=1が最大値で、R(t)は時間tとともに非増加、R(∞)=0であったので、
x=-1nR(t)はt=0でx=0、tが増加するとともにxも増加する。
したがって-1nR(t)は劣化量として使える。いま故障率λ(t)=λ(一定)とすると、
式(2.1)でφ(x)=xとした方程式と式(3.16)は全く同じ形であり、両式より、
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を得ることができる。この関係式は統計的に定義された故障率と物理化学的に
与えられた劣化速度と等しいことを示している。いま寿命の状態にある部品の
信頼度をRspで表すと、式(2.1)と式(3.16)の解より寿命Lは,次のように
与えられる。

Rsp=1/e=36.8%(e=2.718)とすると寿命Lは1/λで与えられ、これは
MTBF(平均故障間隔)でもある.
平均寿命(mean life)L:反応論モデルを利用すると式(2.6)で定義された
とおりである.反応論モデルで定義された寿命と、故障率、λ(t)=λ(一定)と
して故障率から求まる寿命の関係は上述のとおりである。一般に故障時間の
密度関数を用いると次式のように定義される。

あるいは平均寿命LはMTTR(mean time to failure)とも呼ばれる。
表3.1のデータから平均寿命は次のように推定される。


信頼度関数R(t)、不信頼度関数F(t)、故障時間の密度関数f(t)、故障率λ(t)、
平均寿命Lの関係をまとめて図3.1に示す。このような故障に関する統計量を
利用して部品の故障確率、寿命、寿命予測が行える。以上部品の故障の基本量
について述べた。これらの基本量は,部品のみならずシステム全体の故障を評価
する量としても使用できる。